マイクロフィルムのスキャンニングってまだ必要なのですか?

100年前からある情報保存技術であるマイクロフィルムは、誰でも使っているという意味の一般性は失いましたし、省スペースでの保存という特長はデジタル技術に劣ってしまいましたが、保存性や改ざん不可能性など、現代においても代替不可能な特徴を持つ優れた技術です。しかし現代社会で実際に活用しようとするといろいろと不便であることは確かです。マイクロフィルムをスキャナーで読み取って電子ファイルとして活用するのは、過去の情報資産を持ちBCP対策を重視する企業にとっては優れた解決策となります。

マイクロフィルムとは

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マイクロフィルムとは、資料を写真で撮影して保存、閲覧するというもので、写真の発明当初より存在しており、1839年に資料を160:1の比率で撮影したものが発明されました。コダックが1928年にマイクロフィルム部門を立ち上げ、1930年代にアメリカ議会図書館や大英図書館で採用されるようになり普及しました。

マイクロフィルムは資料を特殊な撮影機器を使って原版の1/5-1/40に縮小して焼き写します。閲覧する際にはマイクロフィルムリーダーという専用の投影機を使い、必要な場合は原版と同じサイズで印刷することができます。
図書館などの限られたスペースで莫大な資料を効率的に保管できることと、改ざんに対して強いこと、そして長期保存に適していることから(コダックでは期待寿命を500年としています)、現在もなお一定の需要があります。
図書館での書籍や新聞の縮小版の保存に使われており、保存に向かない紙質でありながら時代を記録する資料として重要であるためとくに新聞の縮小版には現役で活用されています。また改ざんが難しいので法的証拠能力が高いという特徴もあります。そして同じ理由から設計図面の保存にも使われています。

マイクロフィルムと電子媒体

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現在、たった20年ほど前には全世界的に広く普及していたフロッピーディスクは、メディアの入手も保存も読み出しも困難です。フロッピーディスクはまだかろうじて特殊な用途としてどうにかなりますが、当時あった他のよりマイナーな記録媒体はもはや使用不可能と言って良いでしょう。
ファイルを他の媒体にコピーしても、20年前のアプリケーションで作成されていて、そのアプリケーションの後継が現在ないと言った場合に、そのファイルを開くことができるかは極めてあやしいと言えます。こういった経緯から、数十年単位での事業継続性を考慮したときに、最後の砦としてのマイクロフィルムというのは、とくに図画を保存しなければいけない場合に一定の需要が残っています。

しかしながら、あくまで事業継続上の保険であることは確かであって、現在のビジネス環境で便利だというわけではありませんし、そういった最後の保険というようなものを日常業務で使う(劣化や破損の脅威にさらされる可能性を増やす)というのは、BCP対策としても望ましい運用方法とは言えません。

マイクロフィルムのスキャンニング

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そこで、スキャンニングの一つとして、マイクロフィルムのスキャンニングという手法が出てきます。過去の保存情報であれ、今後も活用するのであれ、マイクロフィルムはその独自の運用方針として独立して運用し、その内容を電子データとして取り出して日常業務に活用しようというものです。これには3つのメリットがあります。

使い勝手の向上

マイクロフィルムはあくまで200年近く前に発明され100年近く前に実用化された技術ですので、現代の視点で見て実用性が高いとは言えません。マイクロフィルムリーダーという図書館ぐらいにしかない特殊な装置がなければ閲覧することができず、アウトプットはアナログの写真技術を使った印刷になります。
しかしこれを電子化してPDFなどのファイルにしてしまえば、その後の取り回しは、現代技術で作成されたファイルと何の違いもありません。劣化無しでコピーもできますし、プリンターで印刷もできますし、クラウド越しに共有してタブレットで閲覧することもできます。

マイクロフィルムの原本の保存

いちど電子ファイルとして取り出してしまえば、その後のマイクロフィルムは「用済み」です。会社存続の危急の事態というあまり起こってほしくない時が来るまで、保存に適した場所で眠り続けることになります。マイクロフィルムはもちろん物理的な実体を持つものですので、コダックが素材は500年持つと言っても、ずさんな保管方法では劣化や破損の危険性はあります。その危険性を下げることができます。
とくにこれは、比較的マイクロフィルムを実際に閲覧することの多い大学図書館などでは必要なことでしょう。

マイクロフィルム破損の保険

マイクロフィルムを使うのは保険のためなのですが、いくら慎重に保管しても、天変地異その他の理由による破損や紛失の可能性はゼロにはなりません。しかしこのときコピーとしての電子ファイルがあれば、情報そのものが決定的に失われてしまう危険性を下げることができます。

マイクロフィルムの種類

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マイクロフィルムには様々な形態があります。

16mmロールフィルム

フィルム幅16mmのロールフィルムで、30.5mのフィルムにA4縦の資料を約2400枚収録できます。一般文書、学術書類、技術資料などに用いられています。

35mmフォールフィルム

フィルム幅35mmのロールフィルムです。16mmロールフィルムに比べて、面積比で約4.5倍の画面サイズとなるため、大型図面や地図や新聞などに利用されています。

マイクロフィッシュ

ハガキ大のシート状のマイクロフィルムに資料を写し込んだもので、工事の資料や論文など、物件単位の情報をまとめて保存することができます。またシート上部にはタイトル等を印刷することができます。

ジャケットフィルム

16mmまたは35mmのロールフィルムを数コマ単位でカットし、透明なシート状のジャケットに入れたもので、上部にタイトル欄があります。

アパチュアカード

アパチュアカード(APカード)は専用のカードに35mmロールフィルムのコマを1コマずつ切り取って貼り付けたものです。カードに必要な情報を書き込んで整理できるため、図面の整理に適しています。

マイクロフィルムをスキャンするために

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マイクロフィルムを電子ファイルにするには、それぞれの形態に適したカードスキャナーが必要になります。これは一般的な機械ではなく値段も高いですので、自社や自組織で所有するというのは経済合理性に欠けると思います。またそれよりも大きな問題はオペレーターの育成です。マイクロフィルムを実際に扱ったことのある人は少ないと思いますし、読み取り部分はアナログ機械ですので誰でも簡単に扱えるというわけでもありません。もっというと、フィルム式のカメラを使ったことのあるスタッフすら今や少数派でしょう。そしてなにより、失敗してもトライアンドエラーのできるようなものならば習熟するのも良いのですが、今現役でマイクロフィルムを実用化しかつ投資しようという会社は、事業継続性に対して非常に力を入れているのだと思います。そんな会社が、一番大切で多くの場合一つしかない原本を扱うのに素人を起用するというのは、あまり道理の通っていることとは言えないと思います。
マイクロフィルムのスキャンは、それを扱っている会社にアウトソースするのがベストです。すでに機材を持っていますし、オペレーターはその扱いに習熟しています。アウトソーシング会社は、他の会社からも似たような案件を受けて知識と経験を積み上げています。高価なアナログ機械を操作するのにはオペレーターの習熟はとても重要な要素です。